夏の車中泊って勇気が要りますよね。
年々夏の暑さが厳しくなっている中、熱中症のリスクが高い夏の車中泊は非推奨とされています。
とはいえ、夏でも「快適に」車中泊をしてみたい。
そんな思いで暑さ対策を全て網羅した記事です。
ご自身の環境や予算、DIY難易度などを考えて選んでみてくださいね。
暑さ対策の概要
まずは暑さ対策にはどんなものがあるか整理します。
沢山ありますので、おすすめ度を☆3段階で分けます
おすすめ度☆☆☆の暑さ対策
涼しい日や場所を選ぶ
本末転倒感がありますが、これが簡単かつ最強の暑さ対策です。
車中泊まとめさんによれば、夜9時の気温が22℃〜24℃以下(最低気温で言えば20℃〜22℃以下)の場所であれば、快適な車中泊が可能なようです。
さて一般に、標高が100m上がる毎に気温は-0.6℃されると言われます。
よって平地で最低気温25℃の熱帯夜なら標高500m以上を目安に、30℃の超熱帯夜なら標高1,300m以上の場所を選べばいい計算となります。
と言っても1,000m越えの場所は中々ないですけどね…
欲しい標高が決まったら、車中泊まとめさんの標高マップで車中泊場所をチェックしましょう。
また平地の車中泊であっても、天気予報を確認し、なるべく涼しく日を選ぶことも大切です。
遮光
太陽の光は窓ガラスを通って車内を発熱させるため、日中での遮光は暑さ対策として必須です。
遮光グッズは100均で買えるものから、車種専用の本格的なものまで様々あり、入手の簡単さと費用対効果から星3つとしました。
面積の広いフロントガラスとリアガラス+日射がある側のサイドガラスは絶対に遮光しましょう。
通風確保
車内には36℃前後を維持する人間という発熱体があります。
そのため通風を確保して、人が暖めた空気を逃がし続けることが暑さ対策として重要です。
※エアコン使用のハードルは高いので、通風確保のほうがおすすめ度としては高くなります
風を車内へ通すためには、最低2ヶ所〜できれば3ヶ所以上の窓などを開放したいところです。
開放箇所の優先順位は以下の通りです。
- リアドアガラス2枚
- リアゲート
- フロントドアガラス2枚
リアドアガラスに加えてリアゲートをちょい開けすると、車の前後方向への気流も起こるのでおすすめです。
ただし通風ルートを広く確保すると、外から鍵を開けられるリスクがあることに注意が必要です。
窓を開けられない場所では車中泊を諦める割り切りも大切です
扇風機
窓を開けても車内には徐々に熱が篭っていきますし、エアコン使用時にも涼しい空気を行き渡らせる扇風機はどのスタイルの車中泊でも必須級です。
車内に空気溜まりができないように考えながら扇風機の設置位置を決めましょう。
実際にはスペースの問題で扇風機の置き場所が限られることが多いのですが、その場合は首振り機能のある製品を使いましょう。
ネックファンについて
2023年に話題となったネックファンは効果範囲が顔まわりに限定されるものの、安価で涼しくできるアイテムの一つです。
持ち運びも簡単ですし、サブの扇風機として便利なのでこちらは星2つとします。
換気扇
扇風機と同じように車内へ空気の流れを生み出せるグッズが換気扇です。
車中泊DIYで使われることが多いのはパソコン用の静音2連〜4連ファンで、木枠やプラスチック段ボールを加工してリアドアガラスへ設置します。
DIYはそんなに難しくありません
吸気/排気のどちらか片側だけでも効果はありますが、両方とも換気扇にすると換気&冷却能力がアップします。
また換気扇は雨の日でもしっかり換気できるのが最大のメリットと言えます。
冷感ジェルマット
冷感ジェルマットは冷感マットの一種ですが、温度上昇に反応して吸熱する素材をマット内に含んでいます。
そして体温で暖められたマットの一部が吸熱反応を起こし、逆に体温を奪うという仕組みになっています。
吸熱したマットは一定以下の温度になると勝手に放熱を始めるため、再使用時にマットを冷やす必要はありません。
なめくじは下記のジェルマット(90cm×140cm)を使用して車中泊をしましたが、マットに接した背中が寒く感じるくらい一気に吸熱されます。
電力を消費しないので、夏の車中泊では主力級の働きをしてくれるでしょう。
※ジェルマットの性質やその使い方、選び方はまた別の記事を作ります
おすすめ度☆☆の暑さ対策
水冷マット
水冷マットは暑さ対策として注目したいアイテムの一つです。
水冷マットは気化熱の原理を利用したグッズで、マット内に流れる水を介して人体の熱を車外へ放出します。
温まった水はモーターが起こした水流によって冷却機に送られ、そこのファンで一部の水を強制的に蒸発させ気化熱によって水が再び冷えます。
冷却機分のスペースを取るのと利用に水が必要という弱点がありますが、電力消費がわずかな点とジェルマットと違って冷却が起き続けるというのが大きなメリットです。
冷却機に保冷剤を入れられるタイプもあります
ただし設置や片付けがやや面倒だったり、カビ対策を考えないといけない点から星2つとしました。
冷感マット
冷感マットは熱伝導率が高い素材を使って、人の体(主に背中)から出る熱をマット全体に拡散する製品です。
また汗などの水分に反応して気化熱が発生するような、特殊な表面加工をされている製品もあります。
冷感マットは寝苦しさの解消や熱中症リスクの低下に役立つ一方で熱そのものは残りますので、マットが抱えられる熱量を超えると冷感は失われます。
よってマットからの放熱を促す意味で換気や扇風機を併用すべきでしょう。
簡易クーラー
簡易クーラーとは予め冷凍しておいたペットボトル(保冷剤)と内蔵ファンを使ったクーラーのことです。
ただし製品にもよりますが、冷風は「冷凍500mlペットボトル1本で2〜3時間程度」しか持ちません。
よって夜間で使う場合は、別のクーラーボックスで複数本の冷凍ボトルをキープしつつ、何回かボトルを取り替えることになります。
安く自作が簡単で電力消費も少ない一方で、性能が控えめだったり手間がかかったりするデメリットもあります。
冷風扇
冷風扇は水の気化熱を利用した冷房機器で、やってることは簡易クーラーと似ています。
冷房能力としては扇風機以上クーラー未満といったところです。
電源消費も少なく安価である一方で、車内が加湿されるため生じた湿気を車外へ逃がす工夫が必要です。
また定期的な給水が必要で、それなりのパワーのものを選ぶと本体が大きくなるのもデメリットです。
使うならあくまで”補助として”です
スポットクーラー
スポットクーラーとは持ち運び可能なエアコンのことです。
その効果は確かなですが、①場所を取る、②高価である、③電力消費が激しいというデメリットがあります。
また室内機と室外機が一体となっているため、排熱用ダクトをプラスチック段ボールなどを使って窓ガラスに設置する必要があります。
ちなみに排熱ダクトが無いタイプは出る冷風を打ち消す以上の排熱があるため、締め切った車内で使う意味はありません。
ダクト無しは外で使う製品です
車中泊で使うなら、排熱ダクトがあるタイプの製品を選びましょう。
エアコン
涼しい場所を選ぶのと並んで、効果が最も大きい暑さ対策です。
十分な機能があるエアコンを車載すれば、真夏の平地ですら快適に車中泊できる可能性があります。
しかし車載エアコンには以下の通り、大きなデメリットが複数ありますので星2つとしました。
- 専用製品や取付依頼時の工賃が高額
- DIY設置が難しい
- 電力消費が激しい
- スペースを取る
- 車への穴あけが必要
- 室外機の設置場所が必要
車用エアコン
車に載せることを前提に設計されたエアコンのことで、DC12V電源で稼働します。
必要な冷房能力を満たした上で省スペースであったり、ルーフに設置できるものがあったり、走行中の振動に強いなどの特徴があります。
一方で家庭用エアコンと比べると基本的に本体費用、設置費用ともに高額であり、家庭用エアコンと同等価格帯で選ぶと冷房能力が厳しくなるというジレンマもあります。
またポータブル電源で十分に稼働させようとすると、大容量(※)が求められます。
※たびぼうず様によれば、280Ah=約3,400Wh電源で一晩がギリギリとのこと
家庭用エアコン
一般家庭での使用を前提に設計されるエアコンで、6畳用ではAC100V電源で稼働します。
そのため、バッテリーから電源を取ろうとすると、DC12→AC100Vに変換するインバーターが必要となります。
どちらかというと電源ありオートキャンプ場で活躍します
メリットは冷房能力が高いこと、一般家庭で流通する製品のためコスパがいいことや選択肢が広いことです。
一方で車載用エアコンと比べるとサイズが大きい(特に室外機に注意)、バッテリーから電源を取ると電力効率が落ちる、振動を含めた耐久性への懸念などのデメリットがあります。
カーエアコン
車に備え付けのカーエアコンは、日中の太陽光で熱くなった車の鉄板や内装の温度を一旦リセットするために使うのは有効です。
※短時間で効率よく冷やすために「内気循環」推奨
エンジンを付けていきなりエアコン開始でOKです
しかし短時間使用ならばアイドリング状態でも問題ありませんが、一晩中つけるとなるとバッテリー上がりや燃料消費によるガス欠のリスクがあります。
何よりアイドリング音で近隣の迷惑になるので、よほどの無人環境でなければ非推奨です。
除湿機
コンプレッサー式の除湿機は内部構造がエアコンと同じですので、廃熱を工夫すればスポットクーラーのように使用が可能です。
ただしあくまで除湿する程度の能力ですので、さほど冷却効果は期待できません。
他のデシカント(ゼオライト)式やハイブリッド式除湿機はヒーターが稼働するため、夏の車中泊使用にはそもそも向きません。
おすすめ度☆の暑さ対策
汗拭きシート
汗拭きシートは不快感を低減するだけでなく、含まれるアルコール成分が瞬時に揮発することで体から気化熱を奪い体温を低下してくれます。
しかしシートだけを頻繁に使用して表面温度を下げると皮膚の毛細血管が収縮し、かえって人体の放熱効率としては落ちることに注意が必要です。
暑さ対策としては補助の補助くらいの位置付けです
冷却スプレー
冷却スプレーは噴射されるガスの冷却効果を利用した製品で、暑さ対策としては”一応”有効です。
しかし頻繁に使える量ではないこと、冷却効果が限定的かつごく短時間であること、車内での使用は自己責任となることから、積極的に推奨できるものではありません。
またシャツにかける冷感ミストやハッカ油のようなメンソール成分のみでなんとかしようという製品は、涼しいと体に錯覚させるだけで実際には熱中症まっしぐらなので使用はNGです。
発汗作用を抑えて体温を上昇させるリスクがあります
吸湿剤
速乾性の衣服同様に、吸湿剤で車内湿度を低下させると汗の蒸発を促して体温は低下します。
同じ気温でも湿度が低い方が涼しく感じる原理です
ただし車内の熱そのものを取り除く訳ではないこと、換気で外の湿気が入り続けることから、他の対策の補助程度に考えておきましょう。
速乾性の衣服
速乾性の高い衣服は汗を蒸発させて気化熱を奪ってくれるため、体温低下の一助となります。
ただし車内の湿度が高くなると単純に不快ですし、高湿度環境では汗の蒸発による体温低下効果は無くなっていきます。
よって汗の蒸発で生まれた湿気は扇風機などで適切に排出することが肝心です。
そのために速乾性の衣服は、ぜひ換気や扇風機を併用しましょう。
断熱
断熱施工をすると車内の温度が外気温に影響されにくくなります。
よってエアコン・クーラー類を利用する場合は、冷たい空気が逃げにくくなるため高断熱が有利です。
逆に涼しい場所での車中泊では、高断熱だと人の熱が籠もりやすいため不利となります。
換気さえしっかりすれば大丈夫ですけどね
ただし冬の車中泊では高断熱の方が快適になりますので、どうすべきかは人それぞれと言えます。
もし本格的に断熱したい方は、コチラの記事後半の作業を参照してイメージを掴んでください。
ペルチェ素子系グッズについて
ペルチェ(ペルティエ)素子とは電気を流すと吸熱する特殊な半導体素子で、ネッククーラーやスポットクーラーに利用されたりします。
しかし吸熱面の反対側ではそれ以上の放熱(※)が起きる性質があるため、密閉空間つまり車中泊で使うには不向きです。
※電気抵抗による熱発生分があるため
なめくじは外で使うものだと思っています
もしペルチェ素子系グッズを車中泊時に使う場合は、車外へ強制的に排熱できる扇風機や換気扇を必ず併用しましょう。
結局どうしたらいいの?
夏の車中泊といっても、地域・気温・車種・予算など人によって様々です。
その中でなるべく可能な対策をして行ってみてくださいね。
もちろん最大のリスクである熱中症対策として十分な水分・ポカリ・塩分チャージアイテムなどは忘れずに!
ではまた次の記事でお会いしましょう