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こんにちは、なめくじです。
エブリイは商用車らしく削れるコストは削っていますので、有り体に言えば「うるさい車」です。
本記事では、ロードノイズなどを抑える遮音・吸音処理である「デッドニング」について解説します。
同じく中古車を購入したオーナーさんの参考になれば嬉しいです
購入したエブリイについて
まずは2022年12月に購入したエブリイについて軽く紹介します。
- スズキ エブリイ HBD-DA17V PCリミテッド ホワイト
- 2018年8月製造(4年落ち)
- 駆動:2WDの5AGS
- 走行距離:約78,000km
- 修復歴なし、内外装ともに大小の傷や凹みあり
- ETC(2015年製 FNK-M09T、ETC2.0未対応)
- カーナビ(2018年製KENWOOD MDV-D305、リアカメラ付)
- 乗り出し71.7万円(車を下取りしたので実質80万円前半)
エブリイは年式によらず、うるさいです
車内がうるさくて、暑さ寒さに弱い
エブリイは軽なのに大容量スペース、荷物積載時のパワフルな走り、低価格でそれなりの燃費と車中泊車としてとても優れたベース車です。
車重は850kg(※)と、ソロキャンパーに人気のスペーシアや軽スポーツカーでお馴染みのコペンと同等の軽さとなっています。
※:年式や駆動方式などで多少増減します
一方で、メリットを作り出すために様々なデメリットをも生み出しています。
それが「音がうるさくて、暑さ寒さに弱い」ということです。
スペース確保や車重、車両価格を抑えるために鉄板はペラペラ(衝突安全基準に関係ないところ)で、本当に最低限の吸音材しか装備されていません。
商用車なんで仕方ないですね
しかし車中泊時に周囲の音がうるさいのは安眠に影響を与えますし、なによりそのままでは冬場の寒さが耐えられないレベルとなります。
※なめくじは冬場の山のキャンプ場車中泊を念頭に置いています
純正のままでは、鉄板で風が防げる以外はほぼ外界と同じ温度環境と考えて大丈夫です。
よって、エブリイを快適に使うためにはデッドニングおよび遮熱・断熱施工が必須と言えます。
車中泊用シュラフの方をガチ仕様にする手もありますけどね
デッドニングと断熱
さて、まずは作業の目的を整理します。
デッドニングとは「遮音・吸音施工」のことで、本来はカーオーディオの音質向上を目的として行われる作業です。
デッドニングには最強の断熱材である”空気”を多く含む吸音材も使いますので、デッドニングをすればそれは断熱施工をしたと同義です。
車の断熱施工をすれば温度変化が緩やかとなり、エアコンによって快適となった車内の温度を長くキープできるようになります。
またエアコンの冷房or暖房効率もグッと高まり、燃費も改善します。
ただし断熱してても真夏日の車中泊は非推奨です
ボリュームの関係で本記事ではデッドニングと断熱を、続編記事では遮熱と断熱について解説します。
デッドニング
エブリイの薄い鉄板は多少の走行振動でもまるでトタン板のようにたわみ、各所で”ビビリ音”を響かせます。
またタイヤと地面が接触する音や、車の振動によって生まれるパーツの軋みなどからいわゆるロードノイズが生まれます。
これを消すためには、「①制振材による遮音」と「②吸音材による吸音」をする必要があります。
①では重く硬い制振材を貼り付けることで鉄板の剛性を高め、外界からのノイズ(音波)を反射して内部まで音が届かないようにします。
また②によって車内から生まれる余計な反響音を低減し、静粛性を持たせます。
制振材について
制振材にはいくつも種類はありますが、代表的なのは「レジェトレックス(日東電工)」や「レアルシルト(積水化学工業)」です。
真夏の直射日光下では60〜70℃程度にまで外側の鉄板温度は上昇し、耐熱性能が低い材料は制振性能が落ちたり剥がれたりする危険性があります。
そのためなめくじは制振材としては熱耐性が高く(〜80℃)軽いレアルシルトを選択しましたが、実際には例えば以下のような、安価な材料を選ぶ人も多いようです。
熱くならない内側鉄板のデッドニングにはこちらを使いました
貼り方としては全面に貼るのが一番効果的なのでしょうが、それでは費用も嵩みますし車重が重くなり燃費も悪化します。
また場所によってはそもそも手が届かなくて制振材を貼れない部分もあります。
よって材料の選び方以外にも、貼る位置や材料の切り方を工夫する必要があります。
吸音材について
吸音材は制振材と全く異なり、スポンジ状の穴が無数に空いたりしていて空気を溜め込められる材料です。
穴や溜め込んだ空気の層によって音波の反射を拡散・減弱させて、いわゆる反響音を無くすというメカニズムです。
空気の層こそが吸音にとって重要ですので、いっぱい吸音してやろうと材料が潰れる程詰め込むと却って吸音効果が弱くなります。
吸音材をつめるスペースにちょうどいい厚みの材料を選びましょう
代表的な材料は純正品としてもよく使われ安価な「ニードルフェルト」や、軽量でモコモコな「シンサレート」などが知られています。
ただしドア内部は外部からの雨水が侵入する箇所ですので、防水性が無い材料では湿気がこもりサビ発生の原因となりますので注意してください。
以下、素材による特徴比較です。
- グラスウール:軽い、安価、施工難、「アクリアマット」
- ロックウール:グラスウールとほぼ同じ「ホームマット」
- シンサレート:高断熱性、放湿なし、高価、「シンサレート」
- ポリエステル:③より断熱性無し、放湿あり「パーフェクトバリア」
- 発泡ウレタン:軽い、防水、高断熱性「発泡ウレタン」
- ポリスチレン:ウレタン+施工難、「スタイロフォーム」
- ポリレフィン:高断熱性、防水、高価、「東レペフシート」
- フェルト:安価、湿気×、「ニードルフェルト」
- フェノール樹脂:高断熱性、施工難、「フェノバボード」
- 防音シート:あくまで補助剤
お勧めは東レぺフシートですが高いのがネックです
実際の施工
まずは天井トリム(内張り)を剥がします。
そうすると以下のような天井鉄板が確認できるようになります。
天井のコーキング
エブリイの天井を支えるブリッジは申し訳程度の緩衝材で接着されているだけですので、いかにもビビりの原因となっていそうです。
ここの制振もしておきたいところですね
まずはこの隙間をコーキングし、天井鉄板の剛性を上げます。
使う材料は脱脂用のシリコンオフまたはパーツクリーナー、シリコーンシーラント、コーキングガンです。
施工難易度や防水性からシリコーン系がお勧めです
まずはシリコンオフまたはパーツクリーナーで施工部位を脱脂して乾燥させておきます。
次にシーラントの先を使いやすいよう斜めにカット、そして蓋内部のシールを先で破いてから、コーキングガンにセットします。
後は片手でしっかり支えながら、ガントリガーを引いてシーラントを出していくだけです。
コツとしては同じ力でゆっくりトリガーを引き続けることと、ゆっくりガン先を動かすことです。
シーラントの硬化には1日程度時間がかかるので、垂れた程度ならキッチンペーパーで拭き取ればすぐ修正できます。
どうせ見えない部分ですので、マスキングテープで丁寧に養生する必要ありません。
内装を引っぺがすと分かりますがメーカーのコーキングはもっと雑です
車内には天井以外にも鉄板同士の隙間がいっぱいありますので、後々のDIYに困らない部分はなるべく全てコーキングしておきます。
実際にコーキングを施工したところ明らかに天井鉄板を叩く音が鈍くなった(=剛性が上がった)ので、なるべくやっておくことをお勧めします。
後回しにすると天井トリムをもう一度外すハメになります
制振材を貼る
コーキングが終わったらいよいよ制振材の出番です。
鉄板→制振材→吸音材の順です。絶対に間違えないように
使う材料は、シリコンオフまたはパーツクリーナー、制振材、圧着ローラー、ロータリーカッターです。
下準備として天井鉄板全面をシリコンオフまたはパーツクリーナーでガッツリ脱脂しておきます。
この作業を省くと制振材の剥がれに繋がるので必ず行いましょう。
制振材を任意の大きさにたくさんカットしておきます。
この時にロータリーカッターがあると、切れやすく作業効率が大幅にアップするのでお勧めです。
特にブチル系の制振材を使う場合は、普通のカッターではすぐ切れなくなりますので、なめくじ的には必須レベルです。
制振材は映像や写真などを見ると均等の大きさに切って均等に貼る方がほとんどです。
しかし共振を避け制振効果を最大化させたいのであれば、大きさをバラバラにして適切な位置に貼るべきです。
固有振動数は質量で変化しますからね
天井の剛性は部位によって異なるので、指で叩きながら響くところを探って貼り、貼った状態で再度響く場所を指で探すという作業を繰り返します。
また制振材は鉄板にしっかり圧着させることで最大の効果が得られます。
貼って手でスベスベする程では十分に制振性能が発揮できませんので、ガッツリ圧着しましょう。
天井以外もデッドニングするなら圧着ローラーは必須です
後はひたすら同じ作業を繰り返して以下の通り完成です。
人間心理で凹んでるところに制振材を貼りたくなりますが、エブリイの天井で剛性が低いのは出っ張ってる側なので、グッと我慢です。
レアルシルトの最適な施工面積ははっきりとデータがありませんでしたが、50%程度を目安としました。
というか叩きながら貼っていったら結果的に50%くらいで良い感じになりました
天井施行で使用した材料はレアルシルト30*40cm*6枚程度でした。
施工後に豪雨に見舞われることがなかったので効果が実感しにくいですが、それでも明らかにロードノイズに対する静粛性が上がりました。
あと重心が変わったせいか、交差点の右左折がスムーズになったのは嬉しい誤算でした。
その代わり、おそらく燃費は悪化しています
吸音材を貼る
制振材を無事貼り終えたら次は吸音材です。
先にも言いましたが、この順番を間違えると一気にデッドニング効果が落ちますので注意してください。
さて吸音材は難しいことを考える必要はなく、なるべくひたすら車内を覆うように貼っていくだけです。
ただしアクリアマットやシンサレートなどの密閉した袋状の材料を使う場合は、詰め過ぎないように注意してください。
いっぱい吸音するようにとぎゅーぎゅー詰めすると逆に効果が下がります
なめくじが使ったものはuxcellというブランドの安物で、防水性があり多孔質のポリスチレン製スポンジフォームの材料です。
最初から接着剤が塗布されているので施工しやすいのが利点です。
また天井トリムと鉄板の隙間が広いところでだいたい10mm程度ですので、ちょうど厚みが合っているのも嬉しいポイントです。
レアルシルトで結構費用が嵩んだので断熱材はケチりました
こちらを適当にカッターで切りながら現物合わせで貼り付けていきます。
採寸しながら切り貼りすると綺麗なんでしょうが、どうせトリムで隠れるので雑に施工しています。
ちなみに制振材と違ってがっちり圧着すると空気層が潰れて効果が落ちるので、撫でるように貼りましょう。
なめくじが使った材料は50*500cmの材料ですが、天井だけでも若干足りないので2ロール買った方が無難です。
余った場合は、床やドアなど他の部分にも使うことが可能です。
なめくじは全面施工したので合計4ロール必要でした
実感としては更に静粛性が上がったのと、エアコンの効きが良くなった印象です。
また施工が終わったエブリイは、それなりの軽自動車〜コンパクトカーくらいの静粛性になっています。
しかし唯一エンジン関係の音だけは、減ったものの抑えきれていません。
座席下にエンジンがあるだけでこんなに音消せないもんなんやなと驚く次第です。
もしなめくじのように全面施工せず天井だけのデッドニングでも、安い軽自動車くらいの静粛性にはなると思います。
それでも純正と比べたらめちゃくちゃ改善しますよ
最後に
いかがだったでしょうか。
今回は天井へのデッドニングの実際として解説してみました。
ドアデッドニングについては独立して記事化していますので、こちらも参考にしてください。
さてデッドニングや遮熱断熱は、調べてみるとどうやらめちゃくちゃ奥が深い世界のようです。
基礎知識が無い状態では簡単に迷子になって、何の材料を選べばいいか分からなくなるでしょう。
自信がない方はデッドニングを専門に請け負っているプロに頼むのも手ですよ!
今後は続編として遮熱断熱について解説します。
ではまた次の記事でお会いしましょう