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こんにちは、なめくじです。
私が所有している中古のエブリイは、中古車らしく手を入れなければいけない部分がいくつかあります。
ゆくゆくは車中泊仕様にしていくつもりですが、まずは通常使用で快適な状態になるように整備していきます。
本記事では前回の「デッドニング編」に引き続き、「遮熱断熱」について解説します。
前回記事をお読みでない方は、まずそちらから読んでいただいた方が理解が深まると思います。
両者は被っている部分が多いので本記事は続編という扱いです
さてエブリイは商用車らしく、純正では遮熱断熱機能をほとんど持っていません。
つまり外部からの暑さや寒さがモロに直撃する構造となっているため、快適に使用したいならば遮熱断熱が有効です。
エブリイの暑さ寒さにお困りの方や、エブリイで車中泊を検討している方はどうぞ最後までお読みください。
またエブリイに限らず、車の遮熱断熱に関する基礎知識が習得できる内容となっています。
購入したエブリイについて
まずは2022年12月に購入したエブリイについて軽く紹介します。
- スズキ エブリイ HBD-DA17V PCリミテッド ホワイト
- 2018年8月製造(4年落ち)
- 駆動:2WDの5AGS
- 走行距離:約78,000km
- 修復歴なし、内外装ともに大小の傷や凹みあり
- ETC(2015年製 FNK-M09T、ETC2.0未対応)
- カーナビ(2018年製KENWOOD MDV-D305、リアカメラ付)
- 乗り出し71.7万円(車を下取りしたので実質80万円前半)
特にキャンピングカー仕様などにはなっていません
遮熱と断熱について
前回記事は”音”に関わるデッドニングについて解説しましたが、本記事ではそれと似て非なる遮熱断熱について取り上げます。
まず遮熱と断熱の違いと対策法について紹介します。
- 遮熱:金属や白色塗料などで電磁波を反射し、”結果的に”発熱を防ぐ
- 断熱:断熱材に含まれる空気層などで熱の伝導や対流を防ぐ
早速訳が分かりませんよね。ちゃんと説明します
理解を深めるためにはまず熱の性質について知りましょう。
熱が生まれる理屈は大きく分けて「放射」、「伝導」、「対流」の3つがあります。
放射(遮熱)
1つ目は電磁波によって物質が発熱する現象=放射です。
これは分かりやすい例で言うと日光で暖かく感じたり、電子レンジで食品が温まる現象が挙げられます。
簡単に言えばどこかから熱波が来る訳ではなく「熱エネルギーを持たない電磁波が物質に届いた」結果、物質が振動して温かくなるという訳です。
車で言えばガラスを貫通して届いた日光がシートやトリム(内装)を熱くするのと同じ理屈です。
これを防ぐためにはガラスに遮熱シートを貼り付けたり、白〜シルバーの車を選んだり、あるいは遮熱材をなるべく車外側に設置することが効果的です。
その代わり、冬場の日光でも車内が暖まりにくくなります
伝導(断熱①)
2つ目は熱エネルギーが物から物へと移動する現象=伝導です。
これは熱した物を触ると熱く感じるのと同じ理屈なので、放射よりイメージはしやすいでしょう。
車で言えば日光によって熱せられた鉄板が、近くの車内トリムを熱くするのと同じです。
伝導を防ぐためには、実は空気の層を作ってあげるのが一番効果的です。
ダウンジャケットが暖かいのは、空気の層が断熱しているからです
しかし単に隙間を作るだけでは、例えばカーエアコンで冷やしたり暖めたりした空気が、後述の対流によって外部に逃げてしまいます。
ですので、断熱材は泡構造に閉じ込めた”気泡”として空気を持つように作られています。
ちなみに気泡構造には「独立気泡」と「連続気泡」がありますが、車の断熱に適しているのは「独立気泡」なので間違えないように注意してください。
対流(断熱②)
最後の3つ目は重力の影響によって暖かい空気と冷たい空気が移動する現象=対流です。
身近な例で言えば、エアコンが対流の仕組みを利用した機器です。
折角カーエアコンで車内の空気を暖めたり冷やしたりしても、鉄板近くの空気の流れを遮断しておかないと対流→伝導によって結局外部と同じ温度に戻っていきます。
もちろん100%断熱は無理ですけどね。遅らせることはできます
実は車には外気導入口以外にも、ドアの内側にも遮断できない・してはいけない沢山の細かな外気流入路があります。
よって車内外の対流を防ぐのは正直言って難しいですが、伝導を邪魔することによって結果的には対流をある程度抑制できると考えられます。
他には外部からの空気流入を抑制する「内気循環モード」(カーエアコンの機能)も効果的ですが、同時に車内の二酸化炭素濃度も急速に上がっていきます。
JAFの実験結果からすると、二酸化炭素濃度3,000ppmを超えない連続15分程度が安全に使える内気循環の限界時間です。
結局、断熱は伝導を抑えるのが一番です
具体的な遮熱断熱手順
さて、遮熱断熱に関する基礎知識が頭に入ったところで具体的な話をしていきます。
遮熱断熱はどちらかだけやるというよりかは、両方同時に施工した方が相乗的に効果が発揮できると考えられます。
よってベストの結果を得たいのであれば、遮熱材と断熱材を併用、または両方が最初から1セットになっている材料を使用する必要があります。
もちろん片方だけでもそれなりの効果は発揮できますよ
遮熱材
遮熱材は断熱材と別々、もしくは最初から断熱材と合わさった既製品を使うことが可能です。
どちらが良いかはデータを比較することが難しいですが、どちらかというと断熱材の性能を基準として選ぶべきと考えます。
さてなめくじは2者を別々で使用しましたが、同様の施工法にするのであれば採用すべき遮熱材はアルミニウム一択です。
調べた限りではアルミニウムの薄さと遮熱率の比較データはありませんので、おそらくアルミ箔と呼ばれる0.2mm~0.006mmのもので問題無いと思われます。
つまり皆さんお馴染みのアルミホイルの出番です
アルミ箔は反射率97%と言われるほどの、身近な素材とは思えない最高レベルの遮熱材です。
よって遮熱材は現実的にコレ一択と言って構いません。
アルミ箔を車内に取り付けることによって、夏は外部の熱を反射し冬は内部の熱を逃がさないようにできます。
特に日光の影響を受けやすい、天井やドア内部に仕込むことがお勧めです。
ただし「アルミ蒸着」と呼ばれる手法で作られる、例えばピクニック用のアルミシートのようなものは一気に反射率が落ちるので注意してください。
ちなみに断熱材と遮熱材をどの順序で取り付けた方がいいかは、正解を見つけられませんでした。
参考までにお伝えすると、なめくじは取り付け易さを重視して車外ー断熱ー遮熱ー車内の順序としました。
家作りを真似するなら、車外ー遮熱ー断熱ー車内ですね
遮熱材は100均で購入したアルミホイルを、外した天井トリム(純正スポンジは撤去済み)の車外側にアルミテープを使って全面に貼り付けました。
アルミホイルは断熱材の上から貼り付けてもいいですし、順序を変えて鉄板に直接貼り付けても大丈夫です。
ただし鉄板に直接貼り付けると、次の断熱材を貼った重みで破れる可能性があるので施工時には注意してください。
遮熱施工後の写真は撮り忘れました。すみません…
また天井と同じようにドアでも同じ考え方で施工しています。
床面は日光(紫外線などの電磁波)の貫通量が少ないことと、純正シートとの摩擦で音が出そうなのでアルミホイルの使用=遮熱施工は避けました。
なるべく使いたい方は、鉄板にアルミホイルを貼りその上から断熱材を施工すると良いかと思います。
ちなみにドア施工では他で使用した10mm厚の断熱材の他、下の薄い合成素材も併用しました。
なるべく安価かつ簡便に済ますならば、どこでも手に入るピクニック用アルミシート(ただし蒸着法)がお勧めです。
断熱材
断熱材は実はデッドニング編で使用した吸音材と共通しています。
詳細は当該記事の「吸音材について」を参照ください。
なめくじのお勧めは「東レペフシート」ですが、やや割高な材料ですので予算と相談してみてください。
なめくじはデッドニング用の制振材を豪勢にしてしまったので、節約のためuxcellの安価な材料を用いました。
施工時には剥がれを防止するために、必ず事前にシリコンオフやパーツクリーナーで脱脂しましょう。
車のDIY情報を調べると、大体シリコンオフの方が使われています
ちなみに床面を施工する場合は、純正シートや一部のハードプラトリムを剥がして鉄板を露出させる必要があります。
元の内装がどのような状態なのかを写真に収めながら、パーツを壊さないように外していきましょう。
純正シートの裏側には部分的にニードルフェルトが使われていますが、これを再利用するかは考え方次第です。
購入した中古車では、臭いを吸ってそうだったので全部取りました
もし利用しない場合は、大雑把に手でむしったあとにバリカンで仕上げるのが一番簡単です。
さて断熱材施工時の注意点としては、純正シートの取り付けに余裕が少ないため厚めの断熱材を使用すると一部で元の状態に戻せなくなることです。
10mm厚でも純正シートなど一部のボタンやネジが再装着出来なくなったので、以下のような5mm厚の材料に止めた方が良さそうです。
特にタイヤハウスやステップの薄いハードプラカバーの内部はミチミチのため、断熱処理は諦めるか極薄の材料を使用しましょう。
なめくじは折角貼った10mm断熱材を一部剥がすハメになりました…
どこを優先的に遮熱・断熱すべきか
遮熱断熱の理想は全面施工ですが、そうそうできる人は多く無いと思いますので施工部位の優先順位を解説します。
複数部位を施工をすればするほどエアコンの効きが良くなって、車内が快適状態になってから冬場は冷えにくく、夏場は暑くなりにくいというイメージです。
なめくじが考える施工の優先順位は以下の通りです。
もちろん別の部位からやっても、体感できるレベルで効果は出ますので安心してください。
- 天井(面積が広い・日光が直射する)
- 床面(面積が広い・冬場の底冷え対策)
- エンジン周り(夏場の暑さ対策+静粛性改善)
- ドア内部(面積が広い・施工難)
- その他(施工簡単だが見栄え対策が必要)
①天井
エブリイでは天井からの熱と音の侵入が激しいため、まず最初に天井の施工を推奨します。
ただし天井トリムを外すのは難易度は高めで、トリムの構造に関わる基礎知識と工具が必要になりますので、それを含めて施工を検討しましょう。
1人でもできますが、正直結構大変…二度はしたくない作業です
天井を施工することによって、夏場の直射日光による車内の温度上昇を抑えることが可能です。
また断熱材が吸音することで、雨音や車内に侵入したロードノイズが減って静粛性が上がるデッドニング効果もあります。
②床面
床面もやはり面積が広いため、遮熱断熱がよく効く部位です。
ただし直射日光が当たることはほぼ無いため、遮熱処理は省略していいかもしれません。
擦れ音が出ると嫌なので、なめくじは省略しました
デメリットとしては形状が複雑で工具も必要なため、施工難易度がそれなりに高いことです。
逆にメリットとして、天井と違って1ヶ所ずつ施工できるため、隙間時間を利用して作業を随時進められる点があります。
また床面は道路からの振動やロードノイズが最も入る部位ですので、制振材も合わせて施工すれば車内の静粛性が一気に向上します。
施工前後で比較すれば、どんなに鈍い人でも分かるレベルで変わります
施工でどれくらい車内温度が変化するかをまず体感したい方は、大きめのプチプチ(梱包材)を床面に重ねて敷いて運転してみてください。
特に冬場では足元の冷えが明らかに改善することが分かると思います。
③エンジン周り
一般的なタイプの車と違って、エブリイはエンジンルームが運転席直下に位置するため、エンジン関係の駆動音と発生する熱が車内を直撃する構造となっています。
普通の車はバルクヘッド(壁)でエンジンルームとキャビンが隔離されています
冬場で車内にエンジンの熱が入り込むのは問題ありませんが、夏場ではシートごと暑くなってかなり快適性が落ちる可能性があります。
なめくじはエブリイの夏場をまだ経験していませんが、冬場の長距離移動でかなりのエンジン熱を体感しました。
チョイ乗りメインならば夏場でも問題になりにくいでしょうが、長距離移動=エンジンが過熱する運転がメインの方は積極的に施工したい部位です。
具体的な施工部位は座面の内部および周囲です。
座面内部の施工方法は簡単で、まず足元にある2ヶ所のフックを外し座面を起こします。
すると座面裏側にツメのような固定金具が3ヶ所ありますので、それを指で起こしてパーツの一部を外します。
外したパーツのエンジン側にアルミホイル(アルミテープで固定)を、座面側に断熱材を仕込みます。
座面周囲は、足元のスカート裏とリアシート側があります。
先ほどの座面を起こした状態で、画像の通り複数ヶ所のロック類を外していきます。
ピン2ヶ所は先の尖ったものを中央ピンの隙間に押し込めば浮いて取れるようになります。
ステップカバーは硬いピン5個で止まっているだけなので、端から力を込めてめくれば簡単に取れます。
最後に穴からフックを逃しながらめくればスカートが外せるので、露出した鉄板に遮熱断熱材を貼りましょう。
リアシート側は純正シートを外せばすぐ鉄板が見えますので、座面のロック部位を避けつつ施工していきます。
エンジン周りの施工は以上となります。
ちなみに制振材を併用したい場合は、各写真のように適宜鉄板に貼りましょう(写真では青シートが制振材)。
④ドア内部
ドアはスピーカーが設置されていることが多いことから、デッドニングの主要対象となる部位です。
こちらを施工することで、車内の静粛性向上やオーディオの音質改善が見込めます。
またドア内部には外部からの空気流出入がありますので、施工によって遮熱断熱効果も期待できます。
ドア内部の施工には①トリムの外し方がやや難しい、②施工スペースが少ないので使える材料が限られるといったデメリットがあります。
特にエブリイPA、PCといったグレードでは手回しウィンドウハンドルが装備されており、こちらを外すのにコツが必要となります。
施工の注意点としては、必ず窓ガラスを下ろし格納した状態で材料を貼れる隙間がどれくらいあるかを事前に確認することです。
ここで失敗すると、施工後に窓が開けられなくなります
ドア内部はどうしてもスペースが確保できないので、なるべく厚みの少ない材料を選ぶことがポイントとなります。
それ以外には、外側の鉄板処理は諦めてサービスホールの車内側のみ施工するという選択肢もあります。
遮熱断熱の理屈さえ分かれば、やりようはいくらでも浮かびます
参考動画:エム アンド エム デザイン様「本当は教えたくないデッドニング ノウハウ公開します」
⑤その他(壁、窓)
エブリイではトリムが簡略化されている関係で、鉄板が剥き出しになっている壁があります。
こちらも放射や伝導などにより車内温度変化が簡単に起こってしまうので、遮熱や断熱処理をしたいところです。
商用車ですからね…致し方なし
しかしこちらの壁を処理した際は、断熱材がそのまま見えるので多少見栄えが悪くなります。
また隙間に挟むことができないので、使える断熱材が限られるというデメリットもあります。
施工をする場合は諦めてそのまま剥き出しにするか、クッションフロアなどで好みの内装に仕上げると良いかもしれません。
ちなみに軽キャンピングカーとして作られているエブリイのほとんどは、この剥き出し部分に造作棚がはめ込まれており、まったく露出されないようになっています。
そして造作棚と壁の隙間に断熱材を入れる場合も多いです
壁以外にも、必要に応じてサイドウィンドウやデルタウィンドウ、リアウィンドウを施工する場合があります。
これらは透過率が法的に定められてないため、遮熱断熱材で塞ぐことが可能です。
ただし窓を塞ぐと運転中の視野が狭くなるため、遮光フィルム処理程度に留めておくか、取り外し可能なカバーを作成して車中泊時のみ使用するなどした方がいいかもしれません。
ガッツリ窓を塞ぐと、想像以上に運転視野が無くなって危ないです
取り外し可能なカバーを作成するならば、例えばスタイロフォーム+アルミホイルなどが安価で加工もしやすくお勧めです。
また車種専用のカーテンを使用すると、グッとラグジュアリーな空間に仕上げつつ断熱効果を期待もできます。
最後に
いかがだったでしょうか。
本記事ではデッドニング編の続きとして「遮熱断熱」について解説しました。
デッドニング同様に、遮熱断熱は非常に奥深い世界なようです。
材料も含めて選択肢が多種多様ですので、断熱DIYしたいけど何をしたらいいか分からなくなる方もいるかもしれません。
そんな時は、本記事内のなめくじ施工を参考にしていただくことをお勧めします。
プロレベルには及ばないでしょうが、少なくとも施工前後ではっきりと分かるレベルで違いが実感できています。
車の快適化や、車中泊に向けたDIYとして本記事が参考になれば幸いです。
ではまた次の記事でお会いしましょう